はちよりうえ

見たアニメについて感想などをメモる。※ネタばれあり

この音とまれ! 感想

気に入る作品が、ジャンプ系という状況が続いているのはどういう事だろうね。

 

作品の内容

第1話 新入部員

4月。時瀬高校筝曲部は、2年生になった倉田武蔵を残して部員が卒業してしまったため、新に部員を獲得しなければ廃部になってしまう状況にあった。しかし部室は不良に占拠され、看板には落書きされた状態では新入生の部活の見学時期を迎えても、来てくれないと焦る武蔵は、意を決して、不良たちに部室から出ていくように言う。

時瀬高校に入学した久遠愛は、中学3年から琴作りの職人をする祖父の家に預けられ、喧嘩三昧の中学生活を送っていた。しかし近所の評判も悪かった愛を、祖父・源は「やつのじいちゃんでいたい」のだと帰りを待ち、愛を受け入れ心配しつつ、自分の作る琴の良さなどを語って過ごしていた。次第に愛も喧嘩をしなくなり、祖父の作った琴に興味を持つなどしていったが、そんな愛を不良仲間は疎ましく思い、愛の振りをして祖父の家を襲撃する事件を起こす。元々素行が悪かったと評判の愛は、こうなったのも自分の所為だと警察の疑いを晴らすことを諦め、ちょうど持病を持って言えた祖父はその日に倒れてしまい、しばらくののち他界してしまう。そんな負の噂も気にせず、愛は筝曲部を尋ねるが、そこには、不良に蹴飛ばされている武蔵がいたため、成り行きで助けることになるのだった。

武蔵はまた不良にいい様に利用されまいと、警察沙汰の事件を起こしたと噂のある愛を信用せず、彼の入部届を受理しなかった。しかし追い払っても部室を雑ながらも掃除・修復した愛に謝りに行ったところ、愛の友人の高岡哲生に、愛と琴の関係を聞き、自分は噂に流されてしまった事を自覚する。元々、不良から武蔵を守る手段として喧嘩を用いようとする愛に、筝曲部を荒らしているのは愛も同じだと口にしたことに、罪悪感に感じていた武蔵は、重い気持ちで部室に戻る。ちょうどそこに、以前部室を占拠していた不良たちが、腹いせに武蔵へ殴り掛かり、部室を荒らしていく。

武蔵が目を覚ました時には、犯人は愛であり、既に校長室に連れていかれたことを聞かされる。不良として名高い愛と付き合うという事は、こういった暴力事も覚悟しなくてはいけないのだと身をもって理解した武蔵は、犯人は愛ではないのではと言う疑問を持ちながらも進言せず、荒らされたと言う部室を確認しに向かう。しかしそこには落書きがきれいに落とされた筝曲部の看板が戻っており、愛が看板を持っていった理由を知った武蔵は、自分は筝曲部を守れていなかったと後悔し、愛は筝曲部の部員であり、犯人では無いと校長室で愛の味方をする発言をする。

祖父の家の襲撃事件や、今回の部室荒らしの件で、周囲は自分の言葉を信じず、憶測だけで犯人として扱われた愛は、そんな自分でも祖父や武蔵の様に信じてくれる存在が居たことに涙を流す。

結局、部哲生が手を回したことで真犯人の不良三人が自白し、愛の評判の悪さから、憶測で愛を犯人だと決めつけている教頭を抑えつつ、愛が自分で話しをしてくれることを待っていた校長も、愛が自分の祖父が立ち上げた筝曲部を守りたかったという発言を受け止めて、嫌な思いをさせたと愛をねぎらう。校長と愛の祖父が友人だったことが会話の中で明かされたため、いずれ祖父の事でも話そうと約束し、愛と武蔵は校長室から解放される。

愛は哲生が手を回した事には気づいており、武蔵は犯人のやりたかったことが読めないと疑問に思う中、二人は部室へと戻っていく。

 

 

第2話 資格の在処

新入生向けの部活発表があり、部員をあと3人は獲得しなければ廃部という筝曲部の現状に、武蔵に他の部に負けるなと彼なりのエールを送る愛。しかし武蔵の発表が始まり、琴を弾き始めると、興味の無い生徒たちは私語を始め、愛は聞こえないだろうと大声で注意してしまう。

結局筝曲部の発表は成功には程遠く、自分の演奏が変だったのかと落ち込む武蔵に、哲生は耳になじみが無いからだとフォローを入れ、愛も流行りの曲などでは無く、琴の基本なら良かったのではないかと意見を言い、さらに演奏は気持ち悪くなかったと付け足す。

微妙なフォローに少し元気を取り戻した武蔵は、入部希望だと言う女子生徒が部室に居たことに喜び、さらにその相手が筝曲界の家元のお嬢様で、天才少女と言われている鳳月さとわだったため、さらにテンションを上げる武蔵。そんな歓迎ムードの武蔵に、自分の時とは全然違うと文句を言う愛。

さとわは、同年代との合奏を殆どしたことが無く、高校の予選大会で時瀬高校の筝曲部が楽しそうに演奏していたのを聞き、この部員たちの様な人と演奏したいと思ったと入部理由を述べる。しかし、女の先輩がいないと知ると被っていた猫を脱ぎ、プロになるための話題作りで、弱小高校筝曲部を全国大会Ⅰ位に導いた天才というのは話題性があるだろうと思ったのだと尊大な態度を取り始める。

さとわの本性が分かった武蔵は残念そうにし、愛は彼女の態度に腹を立てて文句を言おうとするが足蹴にされ、琴が破損しているのは自分の所為だと答えた愛に、さとわは楽器を傷つける奴は筝曲部にいる資格なんて無いと胸ぐらをつかんで言われてしまう。

その話は愛が退室したことで終わり、武蔵はさとわに愛の事を誤解していると話そうとするが、彼女は「琴とどう向き合っているか」が自分にとって全てなのだと聞こうとしないのだった。一方愛は、武蔵には入部の許可を貰ったが、そもそも自分は事をする資格があったのかと弱気になっていた。翌日になり、たまたま隣の席だったさとわに資格の貰い方について質問する愛だったが、さとわに軽蔑のまなざしを向けられ、頭にきた愛は教室を抜け出し、屋上で資格は自分で決めるものだと投げやりになってしまう。

放課後になり、卒業していった真白が作った部室の目標の張り紙を、さとわが張り替えたことをきっかけに、武蔵とさとわの目標への考え方の違いが露呈してしまう。武蔵は「全国へは、誰かに連れて行ってもらうのではなく、皆で行くものだと思う」と言い残し、部室を離れたため、残されたさとわは憂さ晴らしなのか、唯一傷つかずに残った琴で演奏を始めたのだった。

愛はさとわが部室に居たため、苦手意識から入ることができないでいたが、彼女が演奏を始めたため、その音に触発され、校長に頼み込んで壊れてしまった琴の修理を依頼する。

琴が搬出される時に、たまたま居合わせた武蔵とさとわ。残る琴が一つしかないため、自宅学習をすると校長に話したさとわは、それまで筝曲部には来ないと言いたげに、修理が住んだら呼ぶようにと武蔵に伝えて帰ってしまう。

武蔵は目標の張り紙が以前のものに戻されていたことに気付き、さとわと愛の間の誤解も解きたいと考える。しかし肝心な愛が武蔵を見ると逃げたり、休んだり帰っていたりしたため、一週間も愛に逃げられ続けた武蔵は、哲生を問い詰め、愛が今何をしてるのかを聞き出し、さとわを連れて様子を除きに行くのだった。

行き先は、学校から修理を依頼していた仁科楽器で、そこで愛は自分の所為で壊れた琴の修理をしていた。最初は楽器を壊した奴に触らせられないと言っていた楽器屋のババアこと仁科静音だったが、店先に座り込み居始めた愛に根負けし、琴が壊れた理由と直したい理由を話すことを条件に修理の手伝いを許可したのだと、通りがかりの店員から聞いたさとわは、馬鹿でもがさつではなく、まっすぐな奴なのだと愛の見方を改め、武蔵にも部活での身の振り方が分かっていなかったと謝罪する。武蔵も、全国を再度目指す勇気が無かったのだと自分にも言われるだけの理由があったと認め、これからは部員としてやっていこうと握手を交わす。

自分がここに居る事がバレていると、騒ぎ出す愛だったが、武蔵とさとわも修理を手伝うと申し出てあっさり受理されたことで、さらに俺の時とは違うと騒ぎ始めるのだった。

 

 

第3話「新生筝曲部始動」

琴の修理があと少しで終わるという段になり、新入部員確保が急務となる筝曲部。さとわは愛が地域で有名な不良だから、新入部員が見学にも来ないのだと言いたい放題。その場では言い返す言葉もなかった愛だが、一晩明けて気を持ち直したのか、自分を恐れて入ってこないような根性無しは必要ないと、哲生に強がって見せるだった。そんな愛に、部活をしていると聞いて話しかけてきた足立実康(サネ)、境通孝(みっつ)、水原光太は、愛の祖父のことも知っている様子で感動していたところに、通りがかったさとわが、名前だけでも筝曲部に入部してもらおうと言う思惑で勧誘され、三人とも筝曲部に入部することとなる。

またもや不良が筝曲部に入ったため、快く思わない教頭は、入部届を握りつぶしていた。

仁科楽器を訪れた筝曲部は、物珍しさからか騒がしくするサネ達を叱ることになるババアこと静音と武蔵。その間に、琴を演奏する際に必要な愛用の爪を選ぶさとわだったが、愛はさとわの指が固い事に気付くが、会話は続かないままだった。爪代が5千円だと知った愛は、手持ちのお金をババアに渡し、さらに足りない分は後日持ってくると、自分様にさとわが選んだ爪を返そうとする。しかしババアは修理を手伝うまでの経緯を含め、愛の琴に対する気持ちを考え、貰った金額だけで良いと値段をまけるのだった。

翌日、筝曲部部室にいたサネ達は、トランプをしながら愛を待っていた。琴を弾かないなら帰れと言う愛と騒いでいたところを、筝曲部に入部した不良たちを快く思わない教頭に見つかり、本当に琴をやる気があるのかと問われ、一週間で何か曲を弾いて見せろと課題を出されてしまう。威圧的な教頭の態度に、つい喧嘩腰で受けて立とうとしてしまう愛だったが、遅れて到着したさとわの機転によって、期間を一か月、発表する相手を全校生徒に広げて、教頭だけの独断で、筝曲部を廃部にさせない口実を作り上げる。

急に発表することになった筝曲部だが、その引き金となったサネたち三人は、いきなり琴なんて弾けないと、自ら戦力外であることを表明し帰っていく。学校を出る前に、教頭が教師と愛の様な不良を、少年院送りにできない警察は使えないと話していたところを聞いてしまう。思わず飛び出しそうになるサネを、何とかみっつと光太が止めるが、元々愛と出会った中学時代に、「哲生とよく一緒にいるから」と言うだけの理由で、刃物を持った高校生との喧嘩に味方として割って入った愛に、何か恩返しをしようと思っていた三人は、貯金箱を割って爪を購入し、翌日の部活にも参加するのだった。

三人が琴を弾く気になったと確認したさとわは、猫をかぶるのをやめ、サネ達はさとわの変わりようにショックを受ける。早速始まる琴の練習も、さとわが琴の構造を口頭で説明しただけで、「さくらさくら」の楽譜を渡してまずはやってみる様に促す。最初こそ意気込んで

取り組んでいた愛たちだったが、30分もするとそれぞれ集中力が切れ、光太に至ってはできないと床を転げまわっていた。この現状を見たさとわは、廃部かもしれないと武蔵に謝罪するが、基礎は飛ばして曲を練習しようと代替案を出す。さらにその曲が演奏されると言うイベントを見に行こうと、少し躊躇したがチラシを見せるさとわ。当日も、顔が知られているためだと理由を付けて変装をしてきたさとわは、演奏後、鳳月会の奏者の子ども達と話をしていた母を避けるように会場から離れるのだった。

発表する曲は龍星群に決まり、メインになる17弦の琴を学校まで運ぶさとわ。それを愛は興味津々で手伝おうとするが、さとわは傷つけられたらたまらないと断り、愛もその言葉に反応し素直に引き下がるのだった。部活でも、どの糸かも分からない愛たちを厳しく指導し、朝練習も加えるとスパルタなさとわ。できないと騒ぐサネ達をかばう愛と、そもそもこうなった原因は愛にあると口走ってしまったさとわに、武蔵は空気が悪いからと解散するように指示を出す。

翌日、さとわのスパルタぶりを聞いた哲生から、自分が教わった方法に基づいて人に教えるだろうから、さとわも家元として同じような教育を受けたのだろうと言われた愛。さらに、自分の言った事で、みんなが部活を辞めてしまったらと不安になるさとわ。そんなさとわに、声を掛けて話を聞いた武蔵は、サネたち三人はともかく、愛は何があっても辞めたりしないと、さとわに言って聞かせる。

さとわはまだ幼かった頃、周囲の子との琴に対する温度差のために孤立したことを思い出していた。そんな中、たまたま見かけた愛が、サネ達に笑われながらも何かを渡し、さとわを「ぎゃふん」と言わせると言いあっていたところを目撃してしまい、不良ならではの仕返しを考えているのかと考える。その場に残った愛が、自分に気付いていなかったため、何を持っているのかを確認したさとわは、段ボールで作った琴で練習する愛の姿に、武蔵の言った言葉を理解する。愛の琴に対する姿勢を見たさとわは、愛に糸の横に番号を振らない様にアドバイスをして、彼らを琴を弾く仲間だと認めるのだった。

 

 

第4話「初めての響き」

武蔵が朝練のために部室を訪れると、さっそく喧嘩をしているさとわと愛。原因を聞くと、愛が爪ではなく指でパリッとした琴を弾くにはどうしたら良いかとさとわに質問し、さとわは練習不足だとしか答えなかったためだと判明する。武蔵が琴を弾く指が出来る工程で、練習をしてマメができることが必要だと愛に説明することで、愛は理解するが、やはりさとわの言葉不足は問題だと指摘する。天才肌のさとわは、教えるのが苦手なのだろうと思った武蔵は、自分がしっかりしなければと、部長として頑張る決意をする。

愛は自分の作った段ボールの琴では、いくら自主練をしても硬い指先にはならないと痛感し、琴と場所を貸してくれるところとして、サネたち四人で、仁科楽器のババアこと静音にお願いをしてみる。愛の祖父・源と知り合いだった静音は、すごい演奏を聴かせると約束した愛の言葉を聞かせてやりたかったと思いつつ、愛たちの自主練の場所と楽器を提供し、部活と自主練を続けた愛は、指が固くなる行程が想像よりも痛いと感じ、武蔵とさとわはこれを経験して指先が固い琴を弾く指を作ったのかと痛感する。

練習の成果が出始め、各自のパートは間違えなく弾けるようになり、とうとう全員での合奏練習を始める筝曲部。さとわの奏でる琴の音に圧倒され、周りの音を聞きながらの演奏もできない愛達に、さとわは音を合わせると言う具体的なやり方を教えられず、部活の終了時刻には皆疲れ果て、愛に至っては音酔いし始めていた。

鳳月の跡取りとして育てられたさとわは、音を合わせられない、周りの音を聞きながら演奏ができないと言う感覚が理解できず、どうすればよいかも分からずにいた。しかし母から「分からない」「できない」という泣き言は許されないと言われて育ったため、合奏練習を続けようと焦りを見せる。そんなさとわの状況を読み取った武蔵は、先輩の真白はどうしてくれたかを思い出し、部活後に食事に行こうと誘い、帰ろうとするさとわも、愛が強引に引き留め、連れてきたため、全員でもんじゃ焼きを食べることに成功する。

初めてのもんじゃ焼きだったため、興味深げに凝視していたのを作ろうとしてくれていると勘違いされたさとわは、やり方が分からないと言えずに固まってしまう。そこを愛が代わり、できない・分からないなら、誰も怒らないから言えと、手早くもんじゃを作っていく。武蔵は部活の面でも完璧でいる必要はないと付け加え、さとわは合わせられる方法が分からないと素直に相談し始める。するとさっそくサネが、バンドではドラムに合わせると提案し、みんなで考えようと、筝曲部は盛り上がるのだった。

合わせられるようにと言う対策は、さとわが手拍子を討ちながら何拍休みなどの合図を送る事だった。しかしそれに頼る癖がついても困るし、タイミングもつかめてきたと、愛はさとわの手拍子なしで合わせてみようと提案する。サネもみっつも同意する中、光太は少し不安そうにしつつも、全員での合奏はぴったりと入りを合わせることができ、大いに盛り上がる筝曲部。それから夜になり、仁科楽器で全員での練習の許可を得た愛は、静音にお礼のイチゴ大福を言葉少なく渡し、その不器用さにすこし静音は笑うのだった。

仁科楽器での練習の際、曲想を練る必要があるとさとわの言葉をきっかけに、琴は龍に見立てて作られた話を祖父から教えられた愛が、曲名をわざわざ流星群とせずに龍の字を当てたことと何か関係があるのかと疑問を話す。さとわは自分の見解として、龍は死後の世界と今の世界を繋ぐ存在であり、見立てて作られた琴は弾く人と聞く人の心を繋げるのではないかと話す。するとサネ達三人は、龍星群はいろいろと理解されない自分たちの思いが届くようにというイメージだと想像を広げ、筝曲部での局に対するイメージが固まるのだった。

その後、休憩のために部屋に残ったのは愛と武蔵だけの状態で、おもむろに練習を始めた愛が奏でる音色に驚く武蔵。音を聞きつけたさとわも優しい音色になぜ愛がこんな音を出せるのかと戸惑い、愛から祖父から琴を教わったのだと聞く。

結局、愛が特別な音を出す事は無く、一体何だったのかと考えていた武蔵は、クラスメイトや絡んできた軽音楽部の同級生に、筝曲部に入り浸っている1年生の不良にパシリにされていると思われていると気づき、真面目に琴をやって居る愛たちの琴を分かってもらえていないと、悔しさを覚えるのだった。

部室では、足を引っ張っていると自覚している光太が、先に来て練習を始めようとしていた。そこへ二番目に来たさとわに、何故そこまで頑張るのかと聞かれ、祖父の事も琴もトラウマだろうと思っていた愛が頑張っているからだと返され、さとわは愛が琴をやる理由を知るのだった。

 

 

第5話「響き届け 僕らの音」

光太から、愛が琴に取り組む理由を聞いたさとわは、自分も今まで愛が不良であると言うだけで言ってきた数々の文句等の言葉を後悔し、部室を飛び出してしまう。廊下で愛とぶつかったさとわは、今まで言ってきたきつい言葉の数々を謝罪し、愛にそんなことを気にして泣いていたのかと茶化され、さとわが愛を蹴りつける、いつもの二人のやり取りを行いながら、部室へと向かうのだった。

校長室では、全校集会での筝曲部の発表をさせる許可を得る教頭。口では筝曲部が活動をしているか見極めると言っているが、本心は筝曲部もろとも愛を学校から追い出すつもりでいるのだった。

練習を重ね、ついに止まらずに最後まで通して弾くことができた筝曲部。喜ぶ光太たちに対し、さとわは本番で通して弾けることは、むしろできなければ困るレベルだと納得していない様子。さらに練習場所と琴を貸している仁科楽器の静音も、休憩させつつテストなら合格点だが、学校中の生徒を納得させる演奏にはまだ気持ちが入っていないとアドバイスを送るのだった。

翌日、静音に言われた「誰に、何を届けたいのか」を意識し、祖父を思い浮かべる愛。その様子を見て、元気づけに背中を叩いて部室に入るみっつ。痛いと騒ぎながら愛も部室に入ると、さとわが練習の準備を終わらせており、最後の到着となった武蔵は、部の一体感が増したと感じるのだった。

本番になり、さとわは17弦を愛に運んでもらう様に頼み、愛も傷つけるかもよと意地悪く確認するが、その時は弁償してもらうと返し、本番に向かう筝曲部。

体育館のステージの袖で、緊張している愛たち。部長の武蔵も何か言わなければと思っていたところで、さとわが指が覚えているから大丈夫だと励まし、ついでに自分が居るのだから大丈夫に決まっているのだと自身ありげに言って見せる。そこで愛たちは突っ込むことで緊張が和らいだのか私語を始め、その様子に助かったとさとわに礼を言う武蔵。しかしさとわも、自分は琴になると突っ走るみたいだから、武蔵には助けられているのだと返しすのだった。

教頭による前置きで、筝曲部の演奏を聴いて、廃部かどうかを判断するように言われた生徒たちは、興味もないものに時間を割くことへの不満などでざわついていた。そんなアウェイな空気に、むしろ落ち着いてきた愛などは、恥やプライドもないからやりやすいと笑顔になり、ステージへ上がる。

準備をする筝曲部を、生徒たちよりも後方から見つめる静音と校長。静音は部外者にも聞かせてもらって悪かったと校長に礼を言い、校長は筝曲部がいつもお世話になってきているのだから当然だと返す。しかも、愛が事前に校長に演奏を聴かせたい人がいるからと、静音を呼んでも良いかと言ってきたことを話し、静音は慕われているのだと言う。そんな校長に、静音はこの騒ぎをここまで大きくした要因の一つに、校長が存続させると明言しなかった事も含まれると指摘するが、校長は、部員たちがどういった音を奏でるのかを聞きたかったのだと、期待しているのだった。

不良で名高い愛が、筝曲部の奏者としてステージに上がっていることに気付いた生徒たちは驚きでざわめき、次第にあの不良が筝曲部なんてカッコ悪いという趣旨の嘲笑が混じり始める。武蔵が、原稿を見ながら演奏前の挨拶をしようとすると、軽音楽部の部員から早く終わらせろとヤジが飛び、武蔵は原稿ではなく、自分たちの居場所を守りたいので演奏をするとだけ話し、その言葉に筝曲部の全員も納得の視線を送る。

武蔵の挨拶を寒いと笑っていた生徒たちも、演奏が始まった途端、その音に圧倒される。さとわのソロについては、その音を孤独な龍の鳴き声の様だと静音は表現するのだった。

演奏前から愛は、「誰も信用していないのだから、自分たちが不利な時にだけ利用すれば良いのだ」とつるんでいた連中に陰で言われ、祖父・源には「周囲がまだ諦めていないうちに、自分が自分を諦めるな」と言われたことを思い出していた。やがて祖父との思い出は、あまりにもひどい喧嘩を続け、迎えに来た哲生が泣いていた事や、その事があってからサネ達を助けたこと、友人を守ったことを源に褒められた事など明るいものへと変わり、源のキャラ弁・クマさんおにぎりに、自然に笑って見せた愛に、源がうれし涙を流したこと等を思い出した愛は、琴の音を祖父に届けようとソロパートを優しい音色で弾き上げる。

愛のソロから、徐々に各パートが加わっていき、最後の盛り上がりの部分では全員の気持ちが重なったため、聞いていた生徒たちだけでなく、校長や静音、筝曲部を廃部に追い込もうとしていた教頭までもが、その演奏に圧倒されるのだった。

 

 

第6話「見えない境界線」

全校生徒前での演奏を終え、喝さいを受ける筝曲部。教頭は愛がここまで琴を弾けるようになるとは思っておらず、因縁をつけるために言葉を探していたが、すかさずさとわがよそ行きの態度で、敢えて厳しい試練を与えてくれた教頭への感謝を述べる。そんなさとわの意図を理解した愛やサネ達も続いて教頭に礼を述べ、何も知らない生徒たちは、不良を改心させた教頭として尊敬のまなざしを向けてきたため、教頭はなすすべなく、これからも精進するようにと、筝曲部の存続を認めるのだった。

部室で乾杯する筝曲部。サネは今まで体験したことのない緊張感と充実感が良かったと興奮気味に話し、武蔵は、このままみんなで全国を目指さないかと提案すると、さとわはもともとそのつもりだと話し、愛たちも目指すなら天辺だとノリ良く了承する。

学校が終わり、一人で仁科楽器を訪れた愛は、静音に何故呼ばれたのか分からず、演奏が下手で怒られるのかと不安に思っていた。しかし静音の要件は、愛の祖父・源から預かっていた琴を愛に渡すためだった。

源の家が荒らされた時も、奇跡的にきれいなままで残っていたその琴は、柾目の琴で、年月を経た木で作られ、静音が最高の職人だと認める源が作ったものだと愛にその価値を話す。さらに琴自体が消耗品であることと、龍舌部分に愛の名が金字で記されていることを話し、「自分よりもちゃんとした奴に」と言う愛に、愛の音はまだ未熟だが、誰よりも優しい音をしており、きっと源にも届いただろうと愛の琴に対する姿勢を褒め、お前の琴だと渡すのだった。

翌日、武蔵によって今の部員の目標として「めざせ全国!」の張り紙が張り替えられた。武蔵が自分たちとの目標だと言ってくれたことを嬉しく思うサネ達だったが、そこへ顧問の滝浪涼香が現れ、筝曲部は、あるかどうか分からない活動の無さが良いところだったと、今までの武蔵たちの活動が迷惑と言いたげな言動をし、さらにさとわにも一人で弾けばよいものを、何故ここにいるのかと矛先を向けたため、武蔵はいい加減に辞める様に大声を出すのだった。部員たちが憤るのも意に介さないという雰囲気で、活動するなら顔を出すとだけ伝え、滝浪は部室から出ていくのだった。

せっかくまとまってきたのに、顧問の滝浪に雰囲気を壊されたとため息をつく武蔵に、今度は全校生徒への発表に感動したと、入部届を出す来栖妃呂。しかし友人の間では彼女の悪い遊びだと言われている、暇つぶしでの入部なのだった。

妃呂が入部し、先輩の女子部員に喜ぶサネ達。妃呂は愛想よく部員たちと挨拶をかわしていき、人懐っこそうな彼女の様子に、これなら大丈夫そうだと武蔵は考えていた。しかしさとわは妃呂が爪にネイルをしていることに気付くが、その場では何も言わないのだった。

さっそく、12月の全国大会前に関東邦楽祭に場慣れも兼ねて出ようと提案する武蔵。さらにさとわから古典をやっておくと音腐奥行きが出ると提案があり、さっそく六段をやってみようかという話になる。

妃呂も入り、琴が二面足りないことに気付いた武蔵は、学校では買ってもらえないのだと困惑する。そこで愛が、静音から受け取った琴を持ってくると発言し、祖父が自分宛てに残してくれていたのだという話に、自分の事のように喜ぶサネ達。その雰囲気に取り残された妃呂は、嫌悪感を感じるが、さとわが琴を持ってくると言う話に、家まで行って運ぶのを手伝うと言った武蔵を、拒否したさとわを見て、付け入る隙を見つけるのだった。

サネ達との帰り道で、さとわが「低いレベルに合わせるのが大変」だと言っていたなどと吹き込み、さとわは家柄も琴のレベルでも世界が違うのだと、サネ達に認識させることに成功する妃呂。

翌日、愛が自分の琴を披露したが、柾目の琴は高価なのだから持って帰れと注意するさとわ。そこでもさとわの言い方がキツイ琴と、普通の家では練習ができないのだと、さとわがお嬢様なためにそこまで配慮できていない様なニュアンスでたしなめる妃呂。しかし愛は、さとわの言い分に素直に従うのだった。

その後の練習でも、比呂は見本での演奏を武蔵に譲ったさとわに、上手く弾けるさとわを差し置いて部長と言うだけで演奏させられる武蔵の気持ちはどうなのかと突っ込み、さらになぜさとわほどの人物が部活動をやって居るのかと、レベルや琴への情熱の差で孤立した経験のあるさとわを委縮させるのだった。

翌日、教師からさとわ宛てのプリントを頼まれる愛。それを見た哲生は、良い方向に変わってきているのではないかと愛に振るが、愛自身はそうでもなさそうな返事をするのだった。

部活に出た愛から、さとわが学校を休んだことを聞いた武蔵とサネ達。特にサネ達は自分たちのレベルに合わせていたために、疲れがたまったのだと責任を感じる。そこに到着した妃呂が、きっとそのせいだと煽り、さらに愛に琴に対する価値観が違う人と一緒にやるのは疲れると話していたと吹き込みにかかるが、愛は「本人の言った事しか信じない」と妃呂の言葉に耳を貸さず、その様子に妃呂は表面を取り繕いながらも、馬鹿みたいだとつぶやき、その様子に気付いた武蔵は、妃呂へ思わず視線を送るのだった。

妃呂はその日の帰りに祖母の家に寄り、借りていた爪を返しに来ていた。隙が無く、つついても結束の固い筝曲部では暇つぶしにもならなかったと、辞めるつもりでいたが、祖母から鳳月のお嬢様であるさとわの噂話を聞き、愛が信じると言ったその本人が嘘をついていたらどうするのかと、新たな火種を得たために筝曲部に居続けることにするのだった。

プリントを渡すために、住所を確認しながら大きい家が無いとつぶやく愛。お嬢様だから一軒家ではないのかと考えつつ、月元荘をみつけ、その201号室のインターホンを押すと、パジャマ姿のさとわが具合悪そうに出てきたため、この住所で合っていたのかとさとわを見る愛なのだった、

 

 

第7話「知られざる音の葉」

尋ねてきたのが愛だったため、驚きのあまり叫んで扉を閉めるさとわ。頼まれてプリントを届けに来ていた愛は、さとわが混乱のあまり発する暴言に耐え兼ね、ドアを開けて文句を言うが、熱のあったさとわは叫んだ疲れからか力尽きてしまう。仕方なくさとわを寝かせ、タオルを冷やして頭に乗せたところまで面倒を見た愛は、部屋の状況から一人暮らしだという事に気付き、一か月ずっと一緒に琴をやっていたが、色々知らないことがあると思い返すのだった。さとわの演奏がどう凄いのか、今なら少しわかるかもしれないと、タオルを探していた時に見つけた、さとわが出場したコンクールのDVDを見始める愛。横になったさとわは、母の夢を見ていた。

鳳月の家元であった父・怜治が急になくなり、母・千春は琴の腕も無く、曲も作れないからと門下生たちも離れていくため、さとわは自分が頑張れば、母があんなことは言われないだろうと、母との稽古にも熱心に取り組むようになる。しかし小学校に上がると遊ぶ時間の無いさとわは孤立し、中学に上がっても部活動を特別に免除される等、同年代の子達との交流を、仕方がないと言い聞かせてきたさとわ。しかし母が、自分に目を向けずに部活動や進学先まで決定してしまうことに反発し、自分の事を見て欲しいと、出場した全国コンクールで自作曲を演奏するのだった。しかしその想いは伝わらず、母・千春に才能の無い者が才能が有る者を背負う重みは分からないと拒絶され、さとわの琴の音は凶器なのだと言われてしまう。さとわは届かせるができなかったとその場で泣き崩れたが、さとわが母に向けて演奏した自作曲のDVDを見た愛は、訳も分からず目に涙を溜めていた。

全国コンクールでの自作曲演奏の後、何をやっても母には何も届かないのだと思ってしまったさとわは、稽古をサボるようになり、やる気がないなら今日限りで破門だと母に告げられるのだった。

翌日、目が覚めたさとわは、キッチンで座って寝ていた愛に驚き、勝手に上がり込んで泊るなと言おうとするが、病人を一人で放っておけなかったという愛の言い分と、そのほか食材が少ない等の文句を言い逃げされてしまうのだった。しかし愛の作った卵粥が鍋に残されていたため、さとわは自分のために作られたそれを食べながら、泣くのだった。

翌日、さとわが登校していることに泣きながら喜ぶ光太。まだ、さとわが自分たちにレベルを合わせていたために疲れて休んだのだと思っていたサネ達三人は、それぞれ申し訳なさそうにさとわを囲むが、部活は楽しいとさとわが明言したため、今度は感動の涙を流して騒ぐのだった。

そんな、まとまりを見せ始めたさとわと愛たちに、水を差すように「どうして本当の事を言っていないのか」と横から話を振る妃呂。妃呂の思惑は、鳳月会を破門され、琴をやる場所を失くしたさとわが、部活を逃げ場にしているのだという話に持っていこうとしたが、さとわが自分の事は自分で言うと、破門にされていることを打ち明ける。愛が破門の言葉自体を知らなかったため、会と縁を切られて跡継ぎも首になったのだと雑に説明することになるさとわ。それでも、愛が真っ先に思い出したのは、さとわに自分に合う爪を選んでもらっている時に、何気なく聞いた「親に琴を習ったのか」という質問に、「関係ない」とぶっきらぼうに答えたさとわの姿であり、武蔵もさとわがバックの手提げを握っていることから、勇気が必要だったことを察し、話してくれてありがとうと伝えるのだった。

みっつもならパンをもっとやると言い出す状況になり、自分の思惑とは違った方向に流れる筝曲部の会話に、妃呂は悪態をついた後にその場から逃げ出すのだった。

妃呂は、追いかけてきた武蔵に、以前自分が陥った「誰も自分を信じてくれない状況」を作り、仲が良さそうな人間関係を壊す遊びを、筝曲部でもやろうと近づいたのだと本心を明かすが、それを聞いた武蔵は軽蔑の目で余程暇なのかと返したため、妃呂は泣きながら武蔵にあたり、そのまま走り去ってしまうのだった。

その後も部活が始まり、六段のうち初段を通したがゴールが見えないという愛のぼやきに、さとわは歴史があり、多数の人の解釈が加わっている古典は、ゴールなどは無く、音がこちらを向いてくれるまでただ弾き込むだけだと話し、例えに人との関係を上げる。そのことに、さとわは母を、武蔵は妃呂を思い浮かべる。

翌日、せっかく入部した相手が部員同士の信頼関係を壊そうとしていたことを聞かされ、泣きたいのは部長である自分のはずなのに、なぜ妃呂が泣いていたのかと、本人に尋ねる武蔵。理由があるなら聞くと言う武蔵だが、妃呂はそんなものは無いと、武蔵から逃げてしまう。そのやり取りを見ていたさとわは、妃呂を追いかけ、楽しそうな筝曲部を見て、「良いな」と思ったのは、自分と一緒なはずだと伝え、部活に来るように言い添える。

印象は最悪な部活に出ることにためらっていた妃呂だったが、愛が「別に入っても良いのでは」と気にしていないと言うよりは、どうでも良さそうに話し、そこに光太が「来てくれた」嬉しそうにしたため、妃呂は決心して謝ることがあるのだと、筝曲部全員に話し始めるのだった。

 

 

第8話「みちしるべ」

古典の曲は人と同じで、理解したいならひたすら向き合うしかないというさとわの言葉を、そのまま楽譜と物理的に向き合う事で理解できるのかと実践する愛。その理由を聞いた哲生は、誤りを正すことなく放置する。

そのままの状態で学食を通り過ぎるが、また一人でいるさとわを、さみしい奴だとからかう愛。ついでにクラスの女子が通りかかったので、会話ついでにさとわを押して女子生徒にぶつからせることで、会話のきっかけを作ってから去る愛。そのことに気付いたさとわは、チャンスとばかりに一緒に昼食を取りたいと、筝曲部以外の生徒との交流に踏み出すのだった。

部活では、領頬にシップを張った妃呂が、今まで自分の嘘で関係を交わした人物たちに謝って周り、ぶん殴られたと言う報告を受ける。ここまでやってもなお、壊れた関係は戻るわけでもなく、許してもらえるものでもないと反省している妃呂に、分かっているのなら何故あんなことをしたんだろうねと、武蔵は真顔で塩を塗るのだった。

さとわが妃呂のケガを唯一心配したため、妃呂はさとわに抱き付いて自業自得だと言わなかったのは彼女だけだと感動する。そんな騒ぎの中、武蔵は今後の予定について話す。

古典を今週で終わらせ、このメンバーで初めての大会に向けての練習に入ると、武蔵が発表したところで、顧問の滝浪が入室し、彼の事を苦手とする武蔵の纏う空気が一気に冷え込む。そんな空気にも構わず、顧問として見ているからいつも通りやるように促した滝浪は、窓際に置いてあった椅子に座り、居座る体制に入るのだった。

気を取り直して、古典の六段で良いから、全力のさとわの琴を聞かせてほしいと、曲と向き合う事のヒントを求めた愛の意見で、さとわが自分なりの六段を弾いて見せる。

さとわの弾く琴には、一音ごとに命が吹き込まれ皆は感動すると共に、愛はどうやったらそんな風に弾けるのかとさとわに詰め寄る。しかしさとわは自分なりの六段を弾けるようになれば良いのだと、自分と同じように弾く必要は無いことを伝えるが、どうも皆の理解が追いつかず、会話が宙ぶらりんで止まってしまう。そこで滝浪は、さとわが言っている自分なりの曲と言うのは、皆にとっては高度なことだと伝えたため、さとわは滝浪が音楽をやって居たのかと考えるが、本人はそのことを否定するのだった。

自分なりの六段について考える武蔵は、自分が今まで弾いていたのは、曲でも何でもなかったんだと認識し、愛と同じように進む方向を見失い始めていた。そこへ妃呂が声を掛け、六段について悩んでいたのだと言う武蔵を、真面目だとうらやましがる妃呂。真剣に取り組めるものが無いのだと言う妃呂に、筝曲部に一生懸命になれば良いし全国大会を目指しているから、そうでなければ困ると、また妃呂には塩を塗り込む武蔵なのだった。

同じく自分なりの六段について悩んでいたサネ達は、愛が家で練習していると聞き、今愛が住んでいる愛の父の妹・久遠衣咲の家を興味半分で押しかけるのだった。

高級マンションに委縮するサネ達だったが、衣咲の遠慮のない薄着や脱ぎ散らかした下着に鼻血を吹きつつ、リビングの隅に布団一枚分だけのスペースで仕切られた場所が愛の部屋だと聞き、叔母に頭が上がらない愛を慰めるのだった。

もう一度祖父の琴を見たいとサネが話題を振り、琴が二面あることに気付く三人。愛は、まだ祖父の琴を弾いて良いのか分からないからと、仁科楽器の静音から納得するまでの間に練習するための琴を一面借りているのだと話す。その言葉にサネは、祖父の気持ちも、琴に対してもまっすぐ向き合ってきていたのを自分たちは見てきたと力強く説得し、祖父の琴を弾いてはいけない理由なんてないのだと、愛に祖父の琴を弾いて見て欲しいと頼むのだった。

愛は祖父・源から教わった曲を弾こうとし、叔母の衣咲がその曲は源が作曲したのだと明かしながら調弦を行ったため、さっそく弾き始める。その時、何を想ってこの曲を作ったのだろうと考えた愛は、曲と向き合うという事の本当の意味を理解し、その音はサネ達を号泣させたのだった。そんな騒がしい愛たちを眺めつつ、衣咲は源が亡くなる前に、自分に何かあったら愛の見方になって叱ってやる大人が居なくなるからと、衣咲に愛の面倒を頼んだことを思い出し、源が望んだ通り、源亡き後も愛は笑顔でいると、源へ報告するのだった。

翌日、部活でサネとみっつは武蔵に自分なりに六段を弾くから聞いてほしいと提案し、光太は自分で調弦をしてみると妃呂に伝えていた。妃呂もネイルをやめ、各部員がそれぞれに琴と曲に向き合っている姿がそこにはあり、武蔵は六段をすることでの自分たちのゴールはここだと思うのだった。

姫坂女学院。そこでは関東邦楽祭の出場校について噂話をする女子生徒が二人いた。そのうちの一人が、鳳さとわが時瀬高校におり、邦楽祭にでるという噂をしたため、もう一人の女子生徒は少し反応するのだった。

武蔵は朝練のために朝食を済ませて家を出ようとするが、弟の武琉は男のくせに琴なんて恥ずかしいと文句を言う。そんな弟には言い返さずに投降する武蔵に、ソファーで新聞を読んでいた父は、視線を新聞から外し、もの言いたげな表情をするのだった。

朝練に向かった愛は、部室前でこそこそする二人の他校の女子生徒を発見し、入室できないと声を掛ける。どかせようと肩に手を掛けたとたんに悲鳴を上げた女生徒の声を聴きつけ、部室からは武蔵が、廊下からはサネ達が駆け付けたため、男に怯える他校の生徒二人。そこへなんの騒ぎかとさとわが声を掛けたため、悲鳴を上げた女生徒は憧れの視線でさとわの名前を呼ぶのだった。

ひとまず部室に招き用向きを聞いたところ、女生徒の一人は姫坂女学院の凰かずさと名乗り、さとわのファンなのだと熱くさとわの凄さを語り始める。同じく姫坂女学院の生徒である花村ふみは、てっきり二人は知り合いなのかと思った漏らしていたが、さとわとかずさの間には家同士の演奏会に出席しているという程度のものだった。

そんな関係でも、かずさはさとわの実力を憧れるほど高く評価しており、姫坂に来て一緒に琴を弾こうとさとわを誘う。しかしさとわはここが良くているのだと断ったため、かずさは部室も汚く、男もいるような環境が良いという理由が理解できず、姫坂の演奏を聴いてくれれば、さとわもきっと考え直してくれると、明瞭孝行の合同演奏会へ来るように伝えて帰っていくのだった。

全国のレベルを思い知れば良いと言う、かずさの捨て台詞に、そんなにすごいのかと武蔵に聞く愛。武蔵は、姫坂女学院は神奈川の代表校だったと話し、その演奏は圧倒的だったと聞いた時の感想を言う。代表と言う言葉に、姫坂を抜けば自分たちが代表レベルなのだと燃える愛と妃呂だが、合同演奏会に行こうと言うと、武蔵は言いよどみつつの返事をするため、様子を気にする愛。

明陵高校は、武蔵が高校受験で落ちていた学校であり、弟が通っている学校でもあった。そのことを思い出していた武蔵だったが、演奏会はせっかくなので行くことに決まる。

その次に、邦楽祭で演奏する曲選びに入り、候補を上げる武蔵。すると久遠という曲名が愛の苗字と同じ漢字を使うことに運命を感じた愛が、これが良いと言い始める。さとわが譜面を読み、難しいところがあるが、曲想を練れば聞かせる曲になるとほほ笑む。やる気に満ち満ちていた愛は、難しいと聞いてもやってやると言ったため、必然的に難しいと言われた一琴の一人に、サネによって指名されるのだった。

合同練習会への引率を滝浪に依頼する武蔵。昨年大会でレベル差を思い知った武蔵と同じように、強豪校の演奏を聴くのは本気で上を目指すなら良い機会で、現実を知ることは良い事だと言う滝浪に、信用の無い目線を送る武蔵なのだった。

教室でも、弦をはじく音を口で表現してテンポの練習をする愛と、付き合わされるさとわ。武蔵との掛け合いが上手く会わないのだとぼやく愛に、この方法で練習するのは恥ずかしいからやめてほしいと文句を言うさとわ。仕返しとばかりに、かずさに時瀬の筝曲部が良いのだと言い放った話題を出され、狼狽えるさとわだが、愛はまだプロデビューの話題作りのために筝曲部をがんばっているのかと言ったため、自分の、今の筝曲部を大切にしたいと言う気持ちが伝わっていないことに拗ねるさとわ。しかし愛は、それなら自分たちの演奏がさとわの将来に関わっているなんて重大だと、真面目な話をしたため、嬉しく思いつつも本当の気持ちを伝えるさとわ。しかし恥ずかしさが出てしまい、愛にからかわれてしまうのだった。

合同演奏会当日、電車の遅延で20分遅刻した時瀬の筝曲部。明瞭高校に入る時に、その景色に、受験時の事を思い出し暗い気持ちを抱えてその門をくぐる武蔵なのだった。

 

 

第9話「突き刺さる言の音」

明陵高校で行われる、姫坂女学院と明陵高校の合同研究会を見せてもらうことになった武蔵たち時瀬高校。

演奏をする和室に入ると、二校の筝曲部の生徒たちが談笑しており、そのほとんどが女子だったため、姫坂女学院の凰かずさの「男は汚い」という扱いに腹を立てた愛たちに対し、柄が悪いと評価する者が多く、その小声での悪評にも反応してしまう愛。武蔵が愛を宥めようとしたその時、明陵高校の筝曲部で唯一の男子である桐生桜介が入室し、時瀬高校の男子の多さに感動し、彼が同じ明陵高校の女子部員の幸とスキンシップを取っては、こっぴどくあしらわれる様に、サネやみっつ、光太は友達になれそうだと意気投合する。

姫坂女学院が演奏のために準備に入り、かずさは愛にあっかんベーをしながら去っていく。その態度に神奈川トップの実力を疑う愛だったが、近に座っていた明陵高校の桜介は、姫坂女学院は全国大会常連校だと太鼓判を押す。全国大会ではまず、琴の音が揃わなければ話にならないと言う桜介の言葉に、愛とかずさ、そしてサネは、時瀬のメンバーで揃えると言う状況に不安を感じるのだった。

演奏する順番を、明陵高校の次に姫坂女学院だと聞いていた武蔵は、自分たちが電車の遅延で遅れたことで、明陵高校の演奏を聞き逃した事に気付く。

姫坂女学院の演奏曲は難曲の「二つの個性」だったが、合わせる人数とスピード、さらに演奏技術で圧倒される時瀬高校。武蔵は昨年よりも明確に感じるレベル差に委縮し、さとわは高校の全国大会のレベルを読み違えていたと認める。愛もかずさの実力を認めて何も言えない中、姫坂女学院の演奏を褒める桜介は、時瀬の面々に全国を目指すなら、この演奏を超えないといけないと、現実を突きつけるのだった。

憧れていたさとわに演奏を褒められたかずさは、幸せそうに満面の笑みを作り、さとわも姫坂女学院に来たら良いと話を進めようとする。しかし愛がさとわの手を掴んでその勢いを殺し、さとわと演奏するために必要なレベルに自分たちがなれば良いのだと、他校の生徒もいる中で啖呵を切るのだった。その言葉に、顧問の滝浪涼香は部長の武蔵に視線を送るが、武蔵は高レベルな演奏に打ちのめされており、それらの領域に追いつくという発想を受け入れられずにいる。

帰っていく時瀬高校に、自分たち明陵高校が演奏する本当の合奏を聞かせてあげたかったと思う桜介は、姫坂女学院よりも自分たちの演奏の方が格上だと言いたげに、そうつぶやく。

明陵高校の校門に向かう途中、武蔵は中学時代に仲の良かった同級生の津田と中山に出くわしてしまう。高校受験で落ちた高校を訪れ、筝曲部ではレベルの打を思い知り、精神的に追い詰められていた武蔵は、たどたどしく津田たちと話をするが、やはり男で筝曲部をしているのはおかしいと言う話になり、否定できずに合わせて笑っていると、愛が割って入り、いたたまれなくなった武蔵は、愛を引っ張って津田たちとの会話が中途半端な形でも、別れることにする。

「バカにされることに慣れるな」「気にしていないなら堂々としていろ」と武蔵の態度に苛立ち、最後には「気になることがあるなら言え」とまで言った愛に対し、拒絶した武蔵は愛が酷く暗い顔をしたことに罪悪感を覚えた。そこへ仲裁に入った顧問の滝浪は、武蔵に全国を目指す筝曲部の部長として、部員を引っ張るのが役目だと、今度は部長としての決心がついていないことを指摘し、顧問の自分は大会結果は気にしないからと突き放す。その様子を見ていた妃呂は、武蔵がだいぶまいっていることに危機感を覚えたのだった。

家に帰っても、明陵高校に通い、兄の武蔵が琴をやって居る事を恥ずかしいと考えている弟の武琉は、学校で兄とその連れが騒いでいた事に気付いており、何故明陵に来ているのかと尋ねる。その理由が筝曲部だったため、本気で部活動をやって居るのかと武蔵に文句を言ったが、武蔵は言い返さなかったため、武琉はそんな兄をダサいと評価し、自室へと入っていく。

その後の部活では、音を合わせる必要がある愛と武蔵のパートを中心に、重い雰囲気が漂い、その様子に戸惑う部員たち。しかし武蔵自身も焦りを感じており、愛は哲生の家にまで来ていら立ちを体現していた。

武蔵と愛が喧嘩していると聞いていた哲生は、愛が武蔵の煮え切らない態度に腹を立てているだけだと知り、第三者としてのアドバイスをする。あくまでも武蔵は先輩であり、年下の自分には相談を持ち掛けられないのだろうと聞いた愛は、自分はどうすることもできないのかと、悔しそうにつぶやくのだった。

総文祭のDVDを見て、勝つための方法を考える武蔵。玄関から聞こえる母親との会話から、妃呂が来たことを知った武蔵は、にこやかに外面良く母と話す妃呂を見て、思わず言葉を飲み込む。部屋に通された妃呂は、武蔵が総文祭の研究をしていた事に感心し、自分が副部長になった事と、何でも話すようにと、逃げ腰な武蔵の顔を手で挟んで目線を合わせるようしながら言うのだった。自分が過去に、筝曲部に迷惑をかけたこと等に話が及び、筝曲部に入った本当の理由を、人の繋がり方が良いなと思ったのだと話しんだため、妃呂自身が恥ずかしくなり、言い切ってドタバタと帰っていく。あっけにとられた武蔵だが、弟の武琉が妃呂の事がうるさいと文句を言っており、時瀬高校の筝曲部は柄が悪く、武蔵に付き合う人間は選べと知った風なことを口にしたため、武蔵は弟の肩に手を掛け、知らない者が勝手なことを言うなと注意したのだった。

武蔵が仲間の事で武琉を怒ったことを母は喜び、父も一人でも部を存続させようと努力した価値を、自ら下げる言葉を使って、見失う事は無いのだと気づかせる。

次の部活で、武蔵は愛が人の接し方に戸惑いながらも、武蔵の心配をしていた事をサネから聞いてしまう。急いで教室でイメージトレーニングをしていた愛の元へ行き、自分が勝手に追い込まれていたのだと経緯を全部話し、謝る武蔵。そんな部長に、以前の部室荒らしの時に信じてもらったから、今も筝曲部に居られるのだと話し始める愛。しかし、途中で恥ずかしくなり、すべては言えず、部長だと認めていないのは武蔵自身だけだと、照れ隠しで話を逸らすのだった。

自身なんてものは有ると言えば有るものだと言い切る愛に、武蔵は妃呂が言っていた「足りないものを補い合っている」という関係を思い出し、自分はすでに良い仲間に囲まれていたことを思い出したのだった。自信よりも大事なものを既に持っていたと思い笑う武蔵に、悩み事は解決したのだと悟った愛も笑い返し、二人で部室へと向かう。

部室に戻ると、部員全員が心配そうにドア付近で待っていた。愛と二人で戻った事に喜ぶ部員たち。早速練習をしようと言う流れに、武蔵はこのメンバーで全国に行きたいと語り、それを聞いた愛は、部室の「目指せ全国!!」の張り紙を新しく作り出す。7人の部員で一文字ずつ書き入れ、傍に名前も添えて「目指せ全国一位!!」の目標が張られ、目標は高い方が良いと活気づいた部員たち。その声を、部室の外で聞いていた顧問の滝浪は、何も言わずにその場から離れていくのだった。

 

 

第10話「近くて遠い距離」

合わせるという課題を見つけた武蔵たちだが、パート練習に分かれると、それ以外にも各自でできていない事がはっきりと見えてきた。集中して練習したいという声が自然と上がり、妃呂の叔父が経営している民泊で合宿をしようと言う話になる。

合宿の引率を、顧問の滝浪に依頼する役を引き受けた武蔵は、苦手意識を持ちながらも、やる気のない滝浪に「やる気が無いのなら顧問を辞めてくれ」とまで言って見せ、引率してもらうことになる。

当日、琴を抑えながらマイクロバスで宿に向かう時瀬高校筝曲部。移動時間に何かできる練習は無いかと愛が武蔵に聞いたため、滝浪は現実を知る方法として、彼らが演奏していた曲を録音したCDを流す。想像以上の出来に、音酔いする面々。リズム音痴だと妃呂とさとわにしごかれていた光太も、自分の音が飛び出してたりしているのを聞いて絶句する。そんな中、愛は状況の把握ができ、合宿で練習して上達するから、今これを聞けたことは勝ちにつながると自信満々に宣言する。

宿に到着し、さっそくパート練習を始める筝曲部。愛は部屋を移動してまでさとわに手本を見せてもらい、光太のリズム音痴を必死に矯正しようとする妃呂。それぞれの練習をした後に合奏に入るが、やはり光太のミスが目立ってしまう。タッチが弱くて音が響かなかったみっつもコツが掴め、愛も引けないパートをさとわの手本を見て習得する中、置いていかれた気持ちになる光太。

練習を終え、浴場で光太の心配をするさとわ。指導している妃呂も、練習中は自分の教え方が悪いのかと考えていたものの、甘やかすのは光太のためにならないと手は緩めずに練習しているのだと話し、どうしたものかと言った様子を見せる。

就寝後、起き上がり荷物を背負って宿を出た光太。光太が居ないと知った男子部屋は騒ぎになり、落ち込んでいたはずの光太に何のフォローもしていなかったと焦りだすサネに、愛は光太を探しに行こうと行動する。

光太が居なくなったという知らせを聞き、滝浪はすぐに嫌になって出ていったかと口に出し、妃呂は自分がキツく指導したせいだと責任を感じる。顧問と女子部員に光太の事を知らせた武蔵は、女子は宿にいるように指示して宿を飛び出していく。

サネとみっつと合流した武蔵に、サネは山を下れば駅だったはずだと確認し、光太は帰ったりしないと進言する。ちょうどそのころ、メトロノームの音で光太を探し出した愛は、一人で練習していた光太に、一瞬泣きそうになり、居なくなったから心配して焦ったことを頭をチョップしながら伝える。光太は置いて行かれることを恐れ、自分を諦めないでほしいと希望を話し、だから皆に追いつくために練習しようと、夜中に出ていった理由を話す。

滝浪に引率されて到着した妃呂とさとわも合流し、妃呂は光太が練習していたことにホッとし、号泣しながら帰ってしまったかもと思ったことを謝りだす。滝浪の先導で帰る中、愛は光太に「お前が居ないのは嫌だ」とだけ伝え、光太は心配かけたことや愛に必要とされていたことに思わず涙ぐむのだった。

翌日、昨夜の勢いで、光太ができない部分を洗い出していた男子たちは、寝不足な状態で朝の集合時間を迎えた。裏箔を取るのが特に苦手だと言う光太の話を聞いた滝浪は、おもむろに床に付箋を張り、それを雑誌で叩いている状態から、付箋を取るように光太に指示する。光太は付箋が取れ喜んでいたが、滝浪はこのトレーニングでリズムを体に叩き込めとアドバイスをして、あとの事は妃呂に任せるのだった。そんな滝浪の行動に、武蔵は意外だという顔をし、さとわは指導の仕方に驚いている様子なのだった。

 

 

第11話「探してた音」

曲想を練っていたさとわに良くやるなと声を掛ける滝浪。今朝の、光太のリズム感の取得方法をみたさとわは、やはり滝浪は音楽をやっていたのではと質問するが、やはり滝浪には何もやって居ないと返されてしまう。そこへ愛と武蔵が音が合わないと滝浪にアドバイスを貰いに来たため、さとわとの会話はいったん途切れる。

愛の質問に、口癖となっているめんどくさいと言っていた滝浪だったが、やる気がないのかとジト目でこちらを見る武蔵に気付き、保身に走り仲間を信じろと適当なアドバイスを送るのだった。そんなアドバイスでも、真剣に受け取った愛は分ったと練習部屋へと引き返していったため、滝浪は面白いと大笑いする。そんな滝浪に、さとわは筝曲部をなめ過ぎだと忠告し、自分も練習に戻るのだった。

滝浪の言葉で、お互いを信じて相手の音を待たないと決めた武蔵と愛の掛け合いは上手くいき、合奏練習でもその成果はさとわにも見て取れるものだった。さとわは更に上の表現を求め、それを例えを用いて二人に依頼してみる。

さとわから、「久遠」の曲想について尋ねられた部員たち。光太は、曲の解説が「風のように時をかけ、願う」というものから、自分が今琴をやっているという事が、数カ月前までは思いつかない事だったのだと話し出し、この時間がもっと続けばと思っているとほほ笑みながら言ったため、さとわもそう言う事なんだろかと、解説の言葉を心の中でもう一度言って見て納得するのだった。

合宿最後の合奏練習となり、緊張する光太に、妃呂は頭を撫でながらきっとできると励ます。演奏中も光太を心配する妃呂だったが、裏箔のイメージを意識した光太は見事に合わせることができ、成果を噛みしめる。

演奏が終わり、自分たちが上達したと実感した部員たちは喜び、武蔵は妃呂に宿を借りられるように手配してくれたことを感謝し、妃呂はその言葉を嬉しそうに照れながら受け取るのだった。

学校に帰っても、練習すると一人が言い出せば、全員が練習してから帰ると言い出し、そんな雰囲気の中でも滝浪が帰ると言えば、武蔵はお疲れ様でしたと送り出す良い流れが出来上がっていた。

合宿の成果として、仲間と弾く琴の音は格別だと言った祖父・源に、今なら分かる気がすると、お土産の現地の石を置いて行く愛。その足で仁科楽器の静音を尋ねた愛は、全国大会が12月に予選会で、夏の今頃が本戦だと聞き、時期を考えてほしいという静音のつぶやきに気付く。

学校での部活では、曲想について分かったのかとさとわに確認する愛。しかしさとわは合宿中に光太が言っていたことがあっている気がすると返したため、愛はさとわが自分たちと琴を弾く事が楽しいのだといじったため、立ち上がろうとしたさとわが琴に躓き愛に倒れ掛かるハプニングが発生する。サネはイチャイチャするなといううらやましさのこもった怒りで愛を注意し、さとわは耳まで真っ赤にして顔を見られない様に壁に向かって立ち尽くすことになる。

武蔵から邦楽祭の演奏順が決まったと発表があり、その後はあっという間に過ぎ去って大会当日。会場に着いた愛たちは、やはり女子ばかりだと感想を述べ、明陵高校の桜介と、姫坂女学院のあずさが声を掛けてきたため、全国大会はどうだったのかと聞いてみる。それぞれベスト4だと聞き、さらに今回の邦楽祭で、明陵が一番最初に演奏することを知る。桜介はさらりと自分が格上だと言う趣旨のセリフを残して他の部員の元へ行き、あずさもさとわに好意の視線を向けながら去っていった。

ホールに入り、出場校たちが席を取っている様子を見ながら、これだけの人が琴をやって居るのだと嬉しくなる武蔵たち。しかし明瞭高校の演奏が始まると、その音の確かさに圧倒され、さとわはその中でも集団を引っ張り歌わせる桜介に、合奏での実力差を感じてしまうのだった。

桜介は、病弱だったために幼少期は思う様に遊べず、幼馴染の泉朝乃に連れられて琴と出会い、自分の居場所を見つける。しかし桜介と遊ぶようになった朝乃に嫌がらせが発生し、桜介は幼いながらも朝乃と一緒にいる方法を考え、人を観察し始める。結局それが合奏の場で活かせる特技となっただけなのだと、どちらかと言うと刺さる音を奏でる桜介。

明陵の演奏に圧倒された愛は、思わず手を握り締めるのだった。

 

 

第12話「ライバル」

明陵高校の演奏が終わり、ホールから出てもなお勝てないと落ち込むサネとみっつと光太。しかしそれをうっとおしいと騒ぐ愛と、レベル差は分り切っている事だと、身近な例えで緊張感を霧散させるさとわ。そこに武蔵が全国一位の目標を諦めるかと尋ね、愛は自分への喝のために近くの柱に頭突きをし、やる前から諦めることはしないと勢いよく宣言した。

武蔵に乗せられた愛の一言で、前向きになれた部員たちは、他にも聞くべき強豪校はいないかとプリントを確認し、姫坂女学院と同じ神奈川県からの出場校で、箔音高校が目に付くが、武蔵もこれと言った記憶になく、順番も時瀬高校の次だったため、演奏は聞けないだろうという事で、話は切り上げられたのだった。

同じ頃、箔音高校の神崎澪は、公園の木陰になっている通路で、あおむけの状態で膝を抱え、空気の音を聞いていた。

気を取り直して、明陵の後に演奏してもかすまない演奏をすればよいのだと意気込んだ愛。しかし腰に当てた腕に誰かが当たったため、とっさに謝るが、相手が見当たらない。そんな愛に、腕が当たった相手の英大付属高校一年、宮千太郎は怒りに震え、「(小さくて)見えなかった。」「(背丈からして)中学生」という愛の発現にとうとう手を出そうとする。怒る千太郎相手に、愛も喧嘩なら買うと言った態度で向かっていくため、千太郎は同じ学校の春日井晴が、愛を武蔵が抑えながら宥めようとする。それでもなかなか収まらない騒ぎに、さとわは人当たりの良い笑顔をフル活用して仲裁に入るが、女慣れしていない千太郎には、さとわの豊満なバストは刺激が強く鼻血を出してしまう。そんな千太郎を笑った愛もさとわに殴られ、喧嘩どころでなくなった二人を引っ張りながら、それぞれの学校の部員は出場の準備と、演奏を聴くためにホールへと別れていくのだった。

愛の叔母の衣咲と共に会場に到着した哲生。一年前は喧嘩ばかりしていた愛が琴の大会に出ていると思いをはせる哲生に、衣咲はその頃のことを良く知らないが、始めて会った時に比べても、青春らしいことをしてくれるようになったと同意する。

ホールでは、永大附属高校の演奏曲が「さらし風手事」だと気づいた愛に、演奏が終わり興味のある愛たちの元へ談笑しに来た桜介が、早く弾くほど弾きづらい部分があることをレクチャーしていた。

千太郎たちの演奏が始まり、その速さは桜介が聞いてきた中でも随一の物で、愛たちも音が雑にならない点や、気迫を感じる。

千太郎が、永大附属高校の筝曲部を指導してきた祖母のためにも、全国大会へ行くと言う気迫がこもり、晴を半ば引きずりつつの演奏を終えると、何故だか聞いている方の愛たちが疲れているのだった。

妃呂が他校のレベルの高さに焦りを感じ始めた中、姫坂女学院の演奏が始まり、以前よりも揃った音を奏でる彼女らの演奏に、サネと光太は何かに刺されるというイ感想を持つ。一方愛は演奏を落ち着いて聞いている武蔵を見て、少し口元を緩めていた。

珀音高校では、いなくなった神崎澪を探し出し大会会場に連れ戻していたところだった。先輩が他校の演奏でも聞けと注意するが、澪は大会の音は決まった音ばかりでつまらないと言って、会場にいるのは苦痛だと訴えるのだった。

愛の演奏を聞きに来た衣咲は、他校のつまらない演奏に思わず眠っていた。指導者の問題だと結論付けた衣咲は、愛たちの時瀬高校は家元のお嬢様・さとわが指導しているのだろうと哲生に聞き、顧問の苗字が滝浪と言う点に食いつく。

衣咲は、高校時代に指揮者とピアニストを親に持つ滝浪という先輩がいた事を話し出す。その名前は涼香かという意味で、哲生が顧問・滝浪の名前を出すと、それだと声をあげた衣咲は、どういうことだと不思議そうにするのだった。

大会会場のカフェスペースで音楽雑誌雄を見る滝浪涼香は、自分の姉・薫の記事を見て自分の音楽へ対する思いが変化した出来事を思い出していた。

指揮者とピアニストの間に生まれ、特定の楽器に興味を示さなかった幼少の涼香だったが、自分の聞きたい音楽をオーケストラ用の楽譜に書き上げていたところを、父親の音楽仲間に発見され、マスコミなどに取りざたされるようになる。しかしその過程で、自由で美しかった音楽が窮屈なものに変化し、音楽は純粋に楽しむものだと、日本の親戚のもとへ行くことを決めた。そんな涼香に、姉の薫は音楽界に引きこまれてしまえば良いのにと、才能ある弟に音楽の道を進めるが、その理由を思い出す前に、涼香はカフェスペースから移動を始める。

昼休みに入り、楽器の搬入作業を始める時瀬高校。緊張してきたと騒ぐサネ達に対し、妃呂は緊張していることを周りに言えず、こぶしを握り締めるばかり。その様子に気付いた武蔵だが、荷物のほどきや受付などがあるため、妃呂に指示を出して受付へと急ぐのだった。

愛のために、源が作った琴が搬入され、愛は重量のある十七弦を運ぶ代わりにこの琴を運んでもらう様さとわにお願いする。大事な琴を預けられたさとわは、少し驚いた後に琴を受け取り、荷ほどき場所で調弦を始め、琴を運び終えた妃呂にも調弦の事を伝えるが、妃呂は琴から手を放してさとわの話を聞いてしまい、壁に立てかけた琴が、さとわが調弦していた琴に向かって倒れ掛かってきてしまう。

とっさに琴に覆いかぶさって守ろうとするさとわと、その様子に気付いて琴を片手で受け止めた愛。すぐに琴をどかしてケガが無いかを確認する部員たち、離れた場所で受付を済ませた滝浪と合流し、こちらに向かっていた武蔵も駆け付ける。

倒れた琴も、さとわが庇った琴も無事で、さとわ自身にもケガがない事が分かるが、愛は自分のケガには触れず、右の手の甲の腫れを気にするのだった。

 

 

第13話「久遠」

危うくケガをさせた上に琴まで傷つけるところだったと、青くなる妃呂。しかし武蔵は彼女に大丈夫だよと話し掛け、大会は今まで練習した分のご褒美なのだと、先輩からの受け売りの言葉を披露する。だから楽しもうと言う武蔵だが、そうは言っても緊張すると付け加える彼に、その場の空気は朗らかな者へと変化するのだった。

作業を再開する部員たちだが、愛はケガが痛むことに焦りを感じていた。そこへ滝浪が愛を連れ出し、その様子に武蔵も何かあるのだろうと感づく。

男子トイレに愛を連れ出て、ケガの様子を見た滝浪は、愛に出場停止を言い渡す。全国出場がかかった大会でもなければ、愛が出なくても曲は演奏できると話す滝浪に、愛はケガをした右手で滝浪の進路をふさぎ、皆と演奏することが楽しい事、自分だけ外から見ている事は嫌なことを理由に、他の部員には言わない様に滝浪に言って、その場から走り去るのだった。

トイレの外で愛の想いを聞いていた武蔵は、走り去る愛をやり過ごして、滝浪にどういうつもりなのかと問いかける。本当に顧問としての責任を問われるのが嫌なら、救護所へ連れていくべきだっただろうと指摘する武蔵に、滝浪は思いつかなかったとはぐらかす。

一方愛は、晴が酷くなり痛みも増している事に、先ほどの滝浪の進路をふさいだ行為を後悔していた。そこへ、調弦室での通し練習の時間だと呼び出すサネの電話が掛かり、愛は通しの練習はできないだろうと判断し、衣咲の食事に当たったと嘘を言って、本番には間に合わせると電話を一方的に切ってしまう。電話を切った後、愛は今までの練習の思い出や、大会で源が作ってくれた琴を使う事を思い返し、ちゃんとした手で弾きたいと、悔しがるのだった。

滝浪に、ケガをした愛を出場させるかの判断を任された武蔵は、ステージへ琴を運ぶ段になっても姿を現さない愛を心配する部員たちの声に、いたたまれなさを感じていた。しかし、皆と演奏するのが楽しいと言う愛の言葉を、嬉しく感じていた武蔵は、ここまで愛のケガの事を皆に話すことをためらっていたが、愛の事を思えば言わなければいけないだろうと、話を始めようとする。

武蔵が愛のケガの話を始めようとした時、やっと愛が合流し、部員たちは思い思いに心配したことと、今更愛抜きでは演奏できないのだと文句を言う。滝浪に一人欠けても演奏はできると言われた点を気にしていた愛はこの言葉に救われ、武蔵もケガの事は話さずに、今までで一番の演奏にしようと、愛に喝を入れるのだった。

舞台袖まで進んだ時瀬高校。緊張が高まる中、愛のケガを話さない判断をした武蔵に、これで良かったのかと聞く滝浪。しかし武蔵はこうするべきだと思ったから後悔はないと返し、外から見ている滝浪には分からないとも付け加える。武蔵の言葉が、いつかの姉の言葉に被った滝浪は、からかいの笑みを止めて、それ以上言葉を続けなかった。

一方愛は、喧嘩でケガが絶えなかった経験から、久遠一回分くらいは大丈夫なはずだと言い聞かせていた。そんな愛を見たさとわは、その汗の量が尋常ではないと心配し始める。

時瀬高校の番だと、姫坂高校、明陵高校や永大附属高校の面々は構える。

入場の際に客席を見て、部活動の存続を掛けた校内での演奏とは違い、客席は演奏を聞きに来た人しかいないという事実を噛みしめる武蔵。そして、いざ演奏を始めると、その風を連想させる音に、思わず会場も聞きこむが、そこへさとわのソロが始まり、そのレベルの高さにかずさがべた褒めしたことを納得する桜介。

しかし愛と武蔵の掛け合いが、ケガの痛みで愛が出遅れた結果合わず、そこから音がバラバラになっていく時瀬高校。頼みのさとわも、愛の音がいつもより小さい事に気付き、愛の手が腫れている事に気付いてしまう。愛のケガは自分を守るためだったと思い至ったさとわも動揺してしまい、演奏は更にバラバラになる。その惨状を見た滝浪は、やはりこうなったかと諦めた様に思うのだった。

この状態から抜け出すために、明陵高校の桜介の様に、仲間の演奏を導くことができればと悔やむさとわだったが、光太が苦手にしていた掛け合いを成功させ、このままでは終われないという気迫を見せたことで、さとわを含む他の部員たちもそれに乗り立て直していく。

二回目の愛と武蔵の掛け合いは、持ち直した武蔵が愛を信じて「待たなかった」事で上手く会い、その音の変化に会場も気づき始める。さらにその後の一琴の武蔵と愛の順でのソロも、愛の出す音に、思わず目を見開く滝浪と会場。

さとわも、愛たちの全力の音を聞き、全力で弾くという自分なりの仲間の引っ張り方を思い出し、彼女の奏でる音に、さとわのファンのかずさだけでなく会場が圧倒され始め、時瀬の面々はやっと元に戻ったと、後半に向けて盛り上げていこうと音と気持ちを一つにしていく。

時瀬高校の演奏に、再び風を連想する会場。そんな中、滝浪は姉の薫との会話で、苦しみながらも音楽を続ける理由は、「関わらずにはいられない、心揺さぶる音に出会ったから」というものだったことを思い出し、今まさに自分が出会ったものがこれなのかと考えるのだった。

そのまま時瀬高校の演奏は、会場を飲み込んだまま終わり、弾き切った愛は腫れた手を膝に乗せ、汗を浮かべるのだった。

 

 

ここから感想

まずは信頼されることから始める作品で、ここまで時間をかけて描く作品はなかなか無いかなと言う印象。それも、「喧嘩尽くしの生活をしていた愛」や、「過去のトラウマから嘘をつくようになった妃呂」。「琴を練習するかも怪しいと陰口を言われた三バカ」、「ずっと一人だったために頼れなかったさとわ」や、「自分に自信が無いから守りに入る武蔵」と、部員全員の課題を掘り下げつつ、各人がお互いに信頼し合うまでを、丁寧に描き、話を続けるのは相当頭使っただろうなと想像すると、作者さんの苦労と意気込みが感じられる、気持ち良い作品だなと思う。

おそらくこれからは、顧問としての指導を始めるであろう滝浪や、出会った他校の生徒とも関係を深めていくのだろうなと想像しているが、いかんせん邦楽祭の時瀬高校の演奏が終わったところで1クール目が終了したため、2クール目の出だしは拍手喝采から始まるのかと、少々中途半端な感じが拭いきれないんだよね。

でも、いざ始まってしまえば、この作品独特のサバサバしたやり取りで魅せてくれるだろうという期待の方が大きい作品。邦楽と言う一般的には縁遠い題材を背負っていながらも、「伝統文化を魅力的に語ること」ではなく、あくまでも「主人公たちの成長」を描いてくれるこの作品が、どこまで描いてくれるのか、2クールも楽しみ。

 

 

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