はちよりうえ

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この音とまれ! 第26話「スタートライン」 感想

 

最終回にたたみ掛けるのではなく、最終回前に一通り見せ場は終わらせて、最後の話は次のステップに向かっていくところを表現する作品は、安心して見ていられる分、少々地味に見えてしまうよな。

 

作品の内容

自分たちの演奏を終えてから、さとわの母・千春を探す時瀬高校の筝曲部メンバー。会場内に母の姿が無かったことから、舞台裏を探し始めたさとわ。そんな彼女を千春もまた探しており、娘の姿を見つけると背後から話しかけたのだった。

中学の時の全国筝曲コンクールで、母に笑顔になってほしいと言う気持ちよりも、自分が寂しいと言う気持ちを琴の音に乗せて表現したさとわに、周囲からのプレッシャーに押しつぶされていた千春は、拒絶する態度を取ってしま。そのことが母娘の中にしこりとなって残ってしまい、千春はさとわを破門する事態にまで発展してしまっていた。

しかし、今回の全国神奈川予選でさとわが表現したのは、まぎれもなく母に笑顔になってもらいたいと言う気持ちであり、千春にもそのことは伝わり、拒絶した態度の謝罪と、やり直す機会が欲しいと言う言葉を引き出していた。

やっと母に自分の気持ちが伝わったと理解したさとわは、その場で膝をつき、声をあげて泣き始め、千春はそんな娘を抱きしめて頭を撫でてやる。その様子を、廊下の曲がり角からそっと時瀬高校のメンバーは覗き見て、笑顔を浮かべているのだった。

さとわが母に抱きしめられ、声をあげるのを辞めた頃、感動のあまり光太が飛び出してさとわに抱き付き、それを注意しようとして、愛、武蔵、妃呂も飛び出してしまい、部活の皆に大泣きしていた姿を見られていたのだと知ったさとわは、大いに赤面する。

場所を移し、妃呂の説教を受ける光太と、なぜか一緒に正座するサネとみっつ。さとわもまだ、恥ずかしさから顔を赤くしていたが、そんな彼女に妃呂は母との再会の邪魔をしたことを謝り、恥ずかしい思いをした彼女を抱きしめて慰めていた。

怒り、怒られている妃呂やさとわたちを、少し離れたソファーに座って見ていた千春は、にぎやかだと呟き、近くにいた愛が、堂嶋が話していた名の通った不良だった生徒だと気づきながらも、さとわを支えてくれたことに感謝を述べ、照れた様子の愛に柔らかい笑みを浮かべるのだった。

さとわの母を探すためにあちこちは知り、最後にはもらい泣きまでしたみっつたちから、飲み物の買い出しじゃんけんを提案された愛は、千春の元を離れて勝負に臨む。子供らしくじゃんけんで盛り上がる彼らを見ながら、千春は晶に連れてきてくれたことに礼を述べ、晶が言っていた通り、彼らは琴にちゃんと向き合っている子たちだったと、納得するのだった。

買い出しじゃんけんに負けた愛は、自販機で飲み物を買っていた。いざ出てきた飲み物を取ろうとかがんだところで、自販機横のゴミ箱の陰に、膝を抱えてうずくまっていたかずさに気付き、大声をあげる。

時瀬高校の演奏に打ちのめされていたかずさは、勝った気でいるのかと愛に絡むが、逆に姫坂女学院の演奏の良さをあげられ、それでも勝つのは自分たちだと返されてしまう。一瞬言おうか戸惑った様子のかずさだったが、仕返しとばかりに時瀬の演奏は良かったと告げ、愛たちはさとわと琴をするのに相応しくないと言った事も訂正する。そんなかずさに、自分たちの演奏は良かっただろうと、満足そうな笑みを浮かべて去っていく愛に、かずさは悔しくも言い返せなかったため、普通は褒められたら礼を言うのが常識だと、そっぽを向いてぶつくさと文句を言うのだった。

結果発表が行われ、審査員長の朝比奈は高レベルな演奏が多かったと前置きし、審査の苦しさを語った。

時瀬高校、珀音高校、姫坂女学院の高レベルかつ方向性の違う演奏に、審査員の票は割れ、朝比奈は純粋に感動した時瀬高校を推し、緑川は古典を意識した演奏をした珀音を、和田は大会と言う舞台を想定すれば、技術力と揃える力を評価して姫坂女学院だと意見を述べる。最後に残った松永に審査員たちの視線が集まるが、ひときわ若く見える彼は、音楽と言う観点から、素人にまで通じる演奏をした時瀬高校は頭一つ抜きんでていると評価し、第32回全国日本音楽予選大会第一位に、神奈川県立時瀬高等学校が選ばれたのだった。

一瞬の間の後、喜び合う部員達。他にも衣咲と真白は手を取り合って声を弾ませ、その隣で哲生はしみじみとすげえと口に出し、千春も笑みを浮かべてこの結果を見届けていた。武蔵の父母も、母親は興奮気味に、父親もうれしそうな笑みを浮かべており、編集者として取材に来ていた塚地と小牧も、個人として感情のこもった拍手を送っていた。

会場中が拍手を時瀬高校に送る中、破れた姫坂女学院のかずさや珀音高校の澪はうつむき、拍手を送ることはできずにいた。

武蔵と妃呂の二年生と共に、全国本選に行けると実感した愛は泣くまいと堪えていたが、とうとう泣き出してしま見、武蔵やサネ達はそんな彼を取り巻いて一緒に喜びを分かち合ったのだった。

表彰式を終え、エントランスまで出てきた愛たち。そこへ衣咲が声を掛け、愛によく頑張ったと、保護者らしく頭を撫でて褒める衣咲。同級生の前で叔母に子供扱いされた愛は照れて衣咲を押し返すが、それを見ていた哲生が茶化したため、二人で取っ組み合ってじゃれ合いを始めるのだった。その横で真白と再会した武蔵は、全国出場を祝われ、演奏を聞かせてくれた礼を言われて、ホッとしたような表情を見せていた。

顔見知りの観客を交えて、談笑する生徒たちを眺めながら、晶は終始余裕そうに見えた滝浪の胸中を聞き、弱音を追聞くことができたと少し笑ってしまうのだった。

そうしていると、晶の兄・慧士が声を掛けてきたため、家を継ぐために琴に必死に向き合っていた時期から兄を避けていた晶は、気まずさから明るく話しかける兄に対して返事をすることができないでいた。滝浪に晶の兄だと名乗り、挨拶を交わす慧士に、さっそく三バカが話しかけて晶の様子を聞いた慧士。さらに指導者が晶で良かったと言うサネ達に対し、慧士は嬉しさから三バカをまとめて抱きしめて、彼らの音の良さを褒めるのだった。そのまま背中越しに、時瀬高校の演奏を通して、晶の音が聞けて良かったと話す慧士に対し、やっと慧士を昔のようにお兄ちゃんと呼ぶことの出来た晶は、この後嬉しさのあまりハグをしようとした慧士の行動を、受け止めたかは不明なのだった。

会場から出る時刻になっても、席から腰をあげないかずさに声を掛けていた史。やがて若葉も、悔しいのはかずさだけでは無いといら立ち気に声を掛け始めるが、そこへ穂澄が入り、うつ向いているかずさと視線を合わせようとしゃがみこみ、彼女の手に自分の手を重ねて、演奏に何も悪いところが無かった事と、またここから王者としての道を切り開いて行けば良いと、罪悪感に苛まれていたかずさを慰めるのだった。

珀音高校も、大会結果を踏まえた反省会が行われていた。初めに指導力が足りなかったと顧問の山本が謝り、続いて部長が全国に行けなかった事を謝っていた。さらに澪が自分の音をもっと以前から出せていたなら、結果は違ったと泣きながら話したため、上級生たちは一年生の澪の演奏に頼りきりだった自分たちの方が情けないのだと、次々に泣き始めてしまう。どんどん悪い方向へ発言が流れていくこの連鎖を止めるべく、山本は今日の演奏は今までで最高だったのだと、大声を出して謝り合うことを禁止する。すると澪は最後に、曲を作ってくれていた山本に対し、最初に楽譜を見た時に綺麗だと思った事や、曲を作ってくれたことに対する礼を言い、今日で顧問活動を終える山本は、その言葉をかみしめるように目に涙を溜めてうつ向くのだった。

会場を出ようとする時瀬高校に対し、その横を通り過ぎようとしていたかずさは、全国では一位を取ってこいと大声で若干喧嘩腰なエールを送り、すっきりしたとばかりに笑顔で去っていく。それに答えていた愛に、今度はいつの間にか肩に顎を乗せていた澪が声を掛け、驚く愛たちを気にすることなく、静かに応援の言葉を残していくのだった。

こうして全国予選が終了し、祖父の店があった空地へ、大会に勝った報告をしに行く愛。もらったトロフィーを空地側にタイトルが見えるように置き、風に吹かれていた愛は、ふと祖父・源に褒められた感覚を覚え、少し笑うのだった。

桜のつぼみが膨らみ始めた頃、新しい曲に挑戦し始めた愛たちは、その難易度の高さに悲鳴を上げていた。そんな彼らが、曲決めの時には難しい方が燃えるから良いと言っていた事を、妃呂は少々あきれたように指摘し、さとわは彼らの負けず嫌いを利用して、わざとできませんと滝浪に申し出るかと提案し、やる気を引き出させていた。そんなバラバラな部員達に、武蔵は新入生歓迎会用の曲に切り替えるかと提案し、合奏のための掛け声をかけるのだった。

 

ここから感想

あれだけさとわが気にしていた、母との再会をOP前に終わらせる等、相変わらず、見せ場なのにサクッと終わらせるこの作品の潔いところは好感が持てる。

堂島婆さんをあっさり先週で終わらせたかと思えば、今週の晶のシーンは慧士のために使いたかったからなんだと納得。年の差を理由に、就職して筝曲界から離れた兄に対する憤りや、才能の無い晶が必死に琴に撃ち込んでいる間に、力になれない慧士の後ろめたさを、この話だけで解消させたのは、中々急ぎ足かなとも思えた。けど、晶自身はさとわを通じて自分と琴との関係性を見つめ直し、踏み出せていた部分があるから、慧士に対するエピソードの分量としては、このくらいの表現でもバランスが取れるのかもしれない。ここら辺をざっくりと切らずに、残して表現する加減が、作品作りの中で難しいところだよね。

さとわの母との問題、晶の家族との問題も解決し、かずさや澪の悔しさは、次の大会では負けないと言うバネに変換し終えた本作。さらに先週気になった、滝浪が生徒たちに意識させた音楽性も審査員には評価され、愛は祖父・源に仲間との琴の音を素晴らしく感じたと報告もでき、作品としてまとまった感のある本作だが、まだ全国一位という目標の道半ばであること、愛が父親には向き合えていない点があるのは、原作で進行中なのだろうか。できれば最後までアニメにして描いてほしいなと考えるが、第二期はいつ頃になるだろうか。ちょっと不安。

 

 

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